子どもに多い股関節炎
股関節炎は、関節内部に炎症が起きている状態を言います。男子に多く、2~12歳頃の幼児から学童期にかけて発症率が高い病気です。痛みは股関節に多いですが、太ももや太ももの前側、膝に生じることもあります。強い痛みで股関節の稼働制限が起こったり自重による股関節の負荷で痛みが強くなるため、立ったり歩いたりできなくなることもよくあります。
膝関節炎は数種類に分けられ、「化膿性股関節炎」や「単純性股関節炎」などがあります。
化膿性股関節炎では、感染や外傷、アレルギーによって股関節内で細菌感染が起こって発症します。
単純性関節炎は原因不明ですが、基本的には1~2週間と短期間で治癒が見込まれます。しかし、5歳前後の子どもは、股関節を形成する大腿骨先端が壊死するペルテス病に進行する可能性もあるため、経過観察を要します。
子どもが股関節炎になる
原因
股関節炎は非感染性の「非感染性股関節炎」と感染性の「感染性股関節炎」に大別されます。以下で詳しい原因をご紹介します。
非感染性股関節炎
「単純性股関節炎」が最も多い疾患で、大抵は経過観察で治癒します。3~8歳くらいの男の子どもがよく発症し、原因には外傷やアレルギーなど様々な説がありますが、未だ詳細は分かっておらず、非特異的滑膜炎であると考えられています。
感染性股関節炎
「化膿性股関節炎」が最も多い疾患で、生後一ヶ月未満の新生児期から乳児期にかけてよく起こり、先天性疾患児や免疫の働きが不十分な低体重児の発症率が高いです。また、成人でも免疫力が落ちる疾患や免疫抑制剤の服用、人工関節の感染によって発症する場合があります。
最も多い原因菌が黄色ブドウ球菌で、中耳炎や肺炎などの病巣から血行性に感染して発症する場合が大半です。結核菌やマイコプラズマ、梅毒、淋菌なども原因となる可能性があります。
股関節炎の症状
単純性股関節炎の症状
急な痛みが特徴で、採血結果は正常で発熱などの炎症反応がありません。
股関節内に水が溜まるため、開閉や曲げ伸ばしに支障が出ます。動かしたときに痛みがある、歩く時に足を引きずるのも特徴的な症状です。
化膿性股関節炎の症状
関節痛、患部の腫れ、発赤、熱っぽさに加えて、発熱、倦怠感、悪寒、食欲の低下といった全身症状が起こることがあります。症状が長引くと、関節を覆う膜が伸びて稀に脱臼が起こることがあり、皮膚に孔が開孔して膿が出てしまうこともあります。
小児が発症した場合、発症部位の場所が深いところにあるため状況が正しく分かりません。おむつ替えの時に痛がって激しく泣く、痛くて関節をほとんど動かせない、といった症状から診断に繋げます。
股関節炎の診断と検査
レントゲン、超音波、MRIなどの画像検査で股関節内を正確に評価して診断することが重要です。股関節内の液体貯留の詳細は、超音波検査やMRIが非常に有効なので実施されることが多いです。
また、溜まった股関節の液体を採取することがあり、細菌培養や遺伝子検査で炎症を起こしている病原体を調べたり、白血球などの数を調べて炎症がどの程度かを評価したりすることもあります。その他、全身状態を調べるために血液検査もよく行われます。
何日で治る?
股関節炎の治療
単純性股関節炎は約2~4週間安静にしていると自然に治ることがほとんどですが、痛みが酷い場合は鎮痛薬による薬物療法を実施する場合もあります。
一方、感染性股関節炎は早急な治療が必要となり、感染の原因を特定して抗菌薬で治療を行います。化膿性股関節炎の場合は、関節を切開して溜まった膿を排出し、洗浄と全身を対象にした抗菌薬の投与を行うための手術を要します。この場合、処置は全身麻酔で行われます。
股関節に大きな障害が生じているケースでは、下肢を弱めの力で長時間牽引し、病的な股関節脱臼を予防することもよくあります。