骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは、骨密度が低下することで骨の量が減少し、スカスカになる疾患です。骨粗鬆症で骨が弱くなると、少しの衝撃で骨折してしまうことがよくあります。例えば、しりもちをついた、くしゃみをした、つまずいて手や肘を地面に着いた、鉢植えを持って動かした、といったことでも骨折することがあります。
骨粗鬆症は世界中の人間が最もかかりやすい疾患の1つであり、日本人も例外ではありません。骨粗鬆症を発症した状態、骨粗鬆症予備軍、健康な状態それぞれの違いがはっきりしていないため、グレーゾーンの人が多いです。
最近では、DEXA(二重エネルギーX線吸収法)などで、骨の量が正確に測定可能となりました。検査の結果から、日本人では約1,100万人が骨粗鬆症を発症しており、日本の総人口の10%弱を占めることが分かりました。現在は症状が現れていなくても、将来的に骨折や腰痛が起こるリスクが高いと考えられます。
現在は自覚症状がなくても、骨粗鬆症によって知らないうちに骨折していることもあります。骨粗鬆症の予防には、症状や原因を知るとともに日常的な注意が重要です。既に骨粗鬆症を患っている方も、正確に現在の骨の状態を把握することが症状悪化の防止に繋がります。以下では、骨粗鬆症とは何か詳しく説明します。
骨粗鬆症の初期症状
- 背部痛
- 腰痛
- 身長が低くなる
- 腰が以前より動かなくなる
などが挙げられます。
これらは症状が出ても軽いため、自覚できないこともあります。
骨粗鬆症を放置すると?
骨粗鬆症が悪化すると、腰が曲がる、背中が丸まるといったことが起こり、身長が低くなります。また、腰や背中に痛みが生じるようになり、少しの力が加わるだけで骨折してしまうことがあります。最初は症状がほとんど現れず、骨折してから分かるケースもよくあります。中でも、背骨の骨折は自覚症状が乏しいことも多いので注意しなければなりません。
骨粗鬆症の原因
骨粗鬆症は、高齢の男性や閉経後の女性に多い病気です。人間は生きている限り、骨は代謝による形成と吸収を続けていますが、このバランスが乱れると骨粗鬆症を発症します。
女性は女性ホルモンの一種であるエストロゲンが減少すると、骨を吸収する細胞の働きが盛んになり、骨を形成する細胞の働きが間に合わなくなります。骨量が減るのはこれが影響していると考えられており、婦人科ではエストロゲンを補充して治療を行っています。
また、運動不足、栄養不足、ステロイドなどが影響して、若年層の方の発症も確認されています。
骨粗鬆症の原因は、加齢の他にこれまでの生活習慣にもあります。以下に主な原因を挙げておりますので、生活習慣を見直す参考にしてください。
骨粗鬆症になりやすい人の特徴
- 加齢
- 生活習慣(運動不足・食生活の乱れ)
- 閉経後のホルモンバランスの変化
- 喫煙・アルコール
- 関節リウマチ
- ステロイド薬の使用
閉経後の女性や高齢者は骨粗鬆症に注意
骨粗鬆症を発症しやすい方は、高齢の方(骨を破壊する働きが強くなり、カルシウムの腸内吸収量も減るため)、更年期以降の女性(閉経後に女性ホルモンが減って骨を吸収する量が増えるため)、食事内容が偏っている方(カルシウム摂取不足になるため)、運動不足の方、日光を普段から十分に浴びていない方(腸のカルシウム吸収をサポートするビタミンDが不足してしまうため)などが挙げられます。
骨粗鬆症の検査・診断
検査では、X線などを用いて骨の変形の有無や折れた部位はどこか調べます。また、骨密度検査は一般的に、DEXA法で大腿骨近位部や腰椎を調べます。当院では、前腕の骨でDEXA法で調べます。血液検査で骨の新陳代謝のバランスを調べるために骨代謝マーカーを測定することもあります。
骨粗鬆症の治療法
骨粗鬆症が原因の骨折を予防するには、適度な運動や食生活の見直しも重要です。
骨量が非常に少なく骨折のリスクが高い場合、運動や食事では骨粗鬆症の状態があまり改善しない場合などは、薬物療法も並行で行います。治療薬は、骨形成促進や骨吸収抑制の効果を持つお薬を用います。骨の新陳代謝の状態に合わせてお薬を選び、骨吸収が進行している方には吸収抑制の効果があるお薬、骨が作られにくい方には形成促進の効果があるお薬を用いて治療を行います。また、女性ホルモン補充や腸管からのカルシウム吸収を補助するお薬を使用することもあります。治療に用いるお薬の種類は、整形外科で診察を受けて医師と相談して決めましょう。
骨粗鬆症治療に使う
内服薬と注射薬
ビスホスホネート
注射と内服薬の2種類あります。
ボノテオ、ベネット、アクトネルなど
月1回、または週1回内服するタイプがあります。朝起きた直後に内服し、内服後30分程度は食事や他のお薬の内服は控えてください。
ボンビバ
月に一度静脈注射による注射を行います。通院の必要がありますが、点滴ではないため時間はかかりません。
SERM
多くは閉経後の50〜60代の女性に処方され、女性ホルモンであるエストロゲンと同じような作用で、骨密度を増やす効果があります。
ビビアント、エビスタなど
内服は毎日行います。
活性型ビタミンD3
カルシウムの吸収を促進し、骨形成を促すことで骨量の減少を抑制します。
エディロールなど
内服は毎日行います。
テリパラチド
(PTH製剤)
副甲状腺ホルモン(PTH)の作用を活用したお薬で、注射薬が2種類あります。骨折のリスクが特に高く、速やかに骨密度の改善を要する患者様に有効です。
テリボン
1年半続けて頂く必要があり、毎週来院して皮下注射を行います。
フォルテオ
患者様ご自身またはご家族の方によって、ご自宅にて毎日皮下注射を行います。注射薬が1ヶ月分入った自己注射器を用いて2年間継続して注射して頂きます。当院では院内処方を行っており、開始する際は看護師が個別に指導を行っております。分からないことがありましたら、再来院して頂きご指導いたします。ご自宅での自己注射は高齢の方でも問題なく行えます。
抗RANKL抗体
骨吸収を抑制する効果に優れた生物学的製剤の注射薬です。破骨細胞の形成をコントロールする分子であるRANKLに対して効果があります。
プラリア
6ヶ月に一度通院して頂き、皮下注射によって注射を実施します。骨粗鬆症の改善の他、リウマチが原因の関節破壊を抑える効果が期待でき、よくリウマチの患者様に用いられています。
抗スクレロスチン抗体
2019年に開発された注射薬で、骨形成の促進と骨吸収の抑制の2つの効果があり、骨粗鬆症の改善に有効です。脊椎を骨折した患者様や、骨密度が顕著に低下しており、骨粗鬆症がかなり悪化している患者様に用います。
イベニティ
皮下注射を1ヶ月に1度、12ヶ月続けて行った後、他の骨粗鬆症の治療薬に変更します。
骨粗鬆症の予防法
若い頃に運動不足だった方や、長期間病気で寝こんでいることが多かった方は、骨が脆くなっているため骨折しやすい状態です。骨の強度を上げるための運動は、骨にかかる力が大きく、反復動作を行うスポーツほど効果があります。バレーボールや重量挙げなどが該当しますが、ウォーキングやゲートボール、水泳を継続して行うことも有効です。散歩や家事による運動、自転車を漕ぐといったことでも骨を強化可能です。
- カルシウムやビタミンDを豊富に摂取できるよう、食生活の見直しをする
- 毎日決まった時間に食事する
- 毎日決まった時間に就寝する
- 日の光を浴びる
- 骨の強度を上げる運動をする
- 転倒に気を付ける
- お酒やタバコをやめる
骨粗鬆症予防になる
食べ物
生活習慣の改善は、骨粗鬆症の予防に重要です。食事の際は、カルシウムやカルシウムの吸収を補助するビタミンDが豊富に含まれる食品を食べるように心掛けましょう。カルシウムがたくさん含まれている食材は、乳製品、小魚、大豆製品、海藻、緑黄色野菜などです。毎日の食事に牛乳1杯、豆腐半丁を追加するだけでも効果的です。
カルシウムが含まれる食品
牛乳、チーズなどの乳製品、ししゃもなどの小魚、大豆製品、緑黄色野菜など。
ビタミンDが含まれる食品
キノコ類、魚類など。1日の推奨摂取量は10~20μgです。
骨密度が低下したら
回復は難しい!
閉経や加齢によって骨密度は低くなります。骨密度は、一度低下すると若い頃と同じ状態まで回復させるのはとても困難です。
骨粗鬆症の治療は基本的に現状維持です。高齢になった時に骨粗鬆症で苦労しないために、若いうちからカルシウムを含んだバランス良い食事やこまめに運動を行い、『貯骨』をすることが重要です。若い時から食事と運動で健康な骨の状態にすることで、歳を重ねた時に骨粗鬆症を予防しやすくなります。
骨粗鬆症は上記のように閉経や加齢が原因で発症することが多いですが、自覚症状が乏しい病気です。骨粗鬆症をそのままにしていると、知らないうちに骨がスカスカになっていた、という場合も多いです。骨粗鬆症の進行をなるべく早いうちに食い止めるためにも、40歳を過ぎたら定期的な骨粗鬆症の検診を受けることをお勧めします。